春のGIシリーズ中休みの今週は東京開催がスタート。日曜に行われる重賞はオークストライアルのフローラステークスだ。
桜花賞は7番人気の伏兵スターズオンアースが優勝したことで、オークスも引き続き混戦模様。それだけにトライアル組にも十分チャンスがありそう。つまり、このフローラステークスは僕たちファンにとっても本番をにらむ上では絶対に見逃せないレースというわけですね。
話題のラスール、距離延長はむしろプラスと捉えたい
1番人気想定はラスール。新馬戦V後に「次のグランアレグリア」とコンビを組むルメール騎手が大絶賛したことでも話題を集めたキタサンブラック産駒です。
どこまでがリップサービスか分かりませんが、世界的名手がここまで褒めちぎったら、そらGI級と思っちゃいますよね。そんなわけでシンザン記念もキャリア1戦ながら1番人気に支持されたわけですが、結果は7着。
着順だけ見れば過大評価ということになりますけど、レース内容としてはゲートで出遅れてしまい、そのままリズムに乗れずになだれ込んでしまった印象。ちゃんとゲートを出た次走の東京マイル自己条件は好位から抜け出す教科書通りの競馬でキッチリ勝ち上がっており、シンザン記念7着はそこまで引きずらなくても良く、度外視しても良さそうですかね?
となると、ポイントは距離。これまで1600m戦しか走ったことがなく、今回は400m延びる2000mです。
ただ、父キタサンブラック×母父シングスピール、半兄に2200~3000mの重賞を3勝しているシャケトラという血統を考えれば、この距離延長はむしろ歓迎材料では?
また、勝った2戦はともに強烈な瞬発力というよりは持続性のあるスピードで押し切った競馬。この勝ち方はまさに父譲りのものであり、マイル戦以上に強い競馬を見せてくれるかも……という期待感の方が強い。
ゲートにはまだ不安があるかもしれないので、その意味でも距離延長はプラスにしかならないと個人的には思っているのですが、どうでしょうか?
父ディープインパクト×母父Storm Catからまたまた大物誕生か
2番人気想定は藤原英厩舎の関西馬ルージュスティリアですかね。
新馬戦ではのちの桜花賞馬スターズオンアースを撃破し、次戦のチューリップ賞では5番人気の支持を集めるなど、素質の高さが期待されている1頭。
ところが、そのチューリップ賞ではゲート内で立ち上がってしまい5馬身ほどの大出遅れ。ラスール以上にスタート一歩目で「終わった」レースとなってしまった。
キャリア1戦の馬だし、後方のまま大敗という結果になっても全然普通のことだと思うんですけど、ルージュスティリアは勝ったナミュールと同じ上がり最速33秒9の末脚で0秒6差の6着まで挽回。直線に入ったあたりでは「もしかしたら勝ち負けまで来るか?」という勢いを見せており、やはりポテンシャルの高さは相当なモンだと思いますよ。
同じ「キャリア1戦の重賞挑戦で出遅れての負け」なら、ラスールよりもこっちの方がはるかに内容のある競馬だった。
また、3歳春クラシックシーズンでは無類の強さを発揮するディープインパクト産駒だけに、ここに来てのますますの成長、上積みが見込めるのは当然。さらに父ディープインパクト×母父Storm Catの組み合わせはキズナ、リアルスティール、ラヴズオンリーユー、エインシンヒカリ、ダノンキングリーなどGI馬を多数輩出しており、血統面でも大きな期待をかけられそうな1頭というわけですよ。
パーソナルハイを物差しに桜花賞上位組と力比較
この2頭の対決だけも興味深さは満点ですが、ほかにも凱旋門賞馬デインドリームを祖母に持つ2戦2勝ルージュエヴァイユ、距離延びて良さそうなフィリーズレビュー4着のマイシンフォニー、東京コース替わりで巻き返しを期す国枝厩舎のエリカヴィータなど、オークスでも伏兵以上の存在になりそうな馬が多数参戦してきた。
そして、個人的にはある意味、上に挙げた馬以上に注目している馬がもう1頭。それは矢作厩舎のパーソナルハイ。
この馬、特別目立った成績を残していなかったんですが前走の桜花賞で6着、しかも1着から0秒2差という僅差の健闘だったわけですよ。
これがたまたまの激走だったのか、それともこれくらい走れる能力のあった馬なのかはまだ分からないのですが、0秒2差の6着に走ったという事実は素直に受け止めたい。
つまり、パーソナルハイを物差しにして、ラスール、ルージュリスティア、はたまたフローラステークスで1~3着に来た馬が、桜花賞上位組とどのくらいの実力差があるのかを測れるという寸法なのですよ。
もちろん、この論が成立するにはパーソナルハイには桜花賞と同じくらいのパフォーマンスを出してもらわないといけないわけですが……
そういうわけで、今回のフローラステークスは単にどの馬が勝ってオークスに名乗りを挙げるのか、だけではなく、パーソナルハイとの比較で疑似的に桜花賞組との力比べができてしまうかもという、1粒で2度おいしいトライアルレースとなっているのだ。

パーソナルハイが重賞戦線でもうちょっと安定した成績を残せていれば、なお良かったんですけどね……