大井などの地方競馬に続き、JRAも今週末の無観客開催が決まった。
26日は「通常通り開催する」と言っていたJRAだが、この日の午後に発表された政府による「大規模スポーツ・文化イベントの2週間の自粛要請」を受けての判断だろう。
まずは無観客でも開催してくれることに感謝
スポーツ系のウェブメディアに籍を置く身としても、週初めまでは割とのほほんと過ごしていたけど、26日に各スポーツイベントの開催中止、延期のニュースが続々と飛び込んできたことで、潮目が一気に変わったなという印象。
今頃になって政府がアタフタしだしたようにも思えるし、スポーツ、エンタメ系イベントがそれに振り回されているようだ。
一方でJRAは農林水産省の外郭団体で半官半民みたいなものだから、国の意向を受けて最悪中止もあるかと思っていたけど、どうにか無観客競馬で踏みとどまった。
これはもう状況が状況だけに仕方ないことだし、ファンとしては開催してくれるだけでもありがたいと思うべきだろう。
これを機会にネット投票会員は増えるだろうか?
ただ、そう思う一方で、競馬人気、売り上げに関しては大きな打撃となるのは間違いない。
競馬場だけじゃなく、ウインズでの発売も取りやめだから、馬券を買えないという難民が大量発生する。インターネット・電話投票は変わらず可能だから、今こそネット投票の普及を呼びかけるべきだし、それがスタンダードになれば競馬の楽しみ方はもっと広がって、将来の馬券売り上げの安定にもつながるきっかけになるかもしれない。
しかし、これは自分でも楽観的すぎると思うし、そう簡単にはいかないと思う。
常識的に考えて、今までネット投票してこなかったヘビー層がこれを機会にいっせいにネット投票を始めるとは思えないし、ライト層もわざわざネット会員になろうとは思わないだろう。
なにより競馬は、競馬場にしろウインズにしろ、そこで馬券を買って応援する“ライブ感”が大きな魅力でもある。「競馬場やウインズに行っても、馬券はスマホを通してネットで買う」というファンは少なくないはずだ。
そうした実券派、ライト層、現場に行ってもネットで買う派の人たちは、競馬場(ウインズ)に行けないのなら……と、週末に競馬を見ることはなくなるだろうし、他の趣味や遊びに時間とお金をかけるようになる。
日刊スポーツによると、2月23日の時点で今年のネット投票の売り上げは全体の71.8%だという。思った以上の占有率だけど、それでももしこの割合分だけの売り上げしかなくなれば、単純計算でも30%マイナス。大きな打撃だ。
一度離れたファンを戻すのは難しい
無観客開催が短期的なもので終わるのなら、それに越したことはない。政府の要請通りなら2週間ほどの辛抱。
しかし、JRA発表による無観客競馬の実施は「当面の間」としており、もし新型コロナ感染状況が今よりももっと深刻になれば当然、期間は長引き、最悪中止もあり得る。
そうなれば、一度離れてしまったファン、週末(地方なら週中)に競馬がないことが普通になってしまったファンをもう一度、競馬に戻すのは至難なことだ。
そうならないように、今は1日でも早く新型コロナが終息することを願うばかりだし、政府には自粛要請するだけじゃなく、競馬をはじめとしたスポーツ、文化イベントが安全に開催できるよう、一刻も早く対策を進めてほしい。
変わらず競馬を応援し、魅力を発進していくだけ
そして、この状況下でも、無観客でも、開催してくれることになった競馬関係者の皆さんには本当に頭が下がる思いで感謝しかない。
僕たちファンとしては、例え現場に行けなかろうが、無観客でも全力で走ってくれる競走馬や騎手、それを支える厩舎・牧場スタッフに向けて、これまで通り全力で応援する。そして、競馬の面白さ、楽しさをSNSなどで発信していくだけだ。
僕も弱小ではあるが、競馬を愛するメディアの一員として、新型コロナに負けない競馬の魅力をこれまで以上に伝えていきたい、と襟を正した次第です。
四位騎手、山内調教師、作田調教師のラストレース
なお、開催してくれるだけでもありがたいとはいえ、競馬界に大きな功績をもたらした四位騎手、山内調教師、作田調教師のラストレースが無観客というのは、本当に不憫で可哀想だ。
僕をはじめ、これまで彼らに馬券でお世話になった人は多いと思うし、何より感動や興奮のレースの数々を僕等に届けてくれた。直接自分の声でお礼やねぎらいの言葉を送りたかった人はたくさんいたと思う。
引退セレモニーだけでもなんとかならないか、と思っていたが、四位騎手は延期を断って、予定通りに引退式を行うという。なんとも四位騎手らしいというか、これが勝負人の潔さなんだろうなぁとも思う。
90年代からこれまで競馬界を盛り上げてくれた3人のラストレース、しっかりとテレビの前でこの目に焼き付けたい。