2020年の天皇賞・春も熱戦でしたね。
新型コロナ禍の中、外出できないゴールデンウィーク中にもこれほど熱い戦いで僕たちを楽しませてくれるサラブレッド、ジョッキー、厩舎スタッフほか競馬関係者の皆さまに感謝です。
そして、優勝したのはフィエールマン。
これで昨年に続く天皇賞・春連覇でGⅠは菊花賞を含めて3勝目。まさに淀長距離の申し子と呼ぶにふさわしい利勝利でした。
ルメール騎手、手塚調教師はじめ厩舎スタッフ、牧場スタッフ、オーナーはじめ関係者の皆さま、本当におめでとうございました。
ではレースを振り返ってみたいと思います。
第161回GⅠ天皇賞・春 回顧・総評
武豊の騎乗は「今のキセキ」としてはベストだったと思う
まず、注目されたキセキのスタート。
パドック、返し馬、ゲート入りとすべて落ち着いていたキセキでしたが、発馬でも悪さをすることなく、ゲートを上手に出ましたね。
さすが武豊騎手、といったところでしょうか。
ハナはダンビュライトが取り、その後ろをスティッフェリオが続いて、最初の1000mが60秒3のスローペース。
キセキは先行する音無厩舎コンビの後ろ、3番手から折り合い良く進んでいましたが、武豊騎手のコメント曰く「1周目の直線に向いてスイッチが入ってしまった」。
我慢が利かず、やむを得ずハナを取るという形にはなったものの、いやあ、この場面は本当にワクワクしましたよ。もし、通常通りお客さんが入っていたら、今日イチで盛り上がったのではないでしょうか。どよめきと歓声がテレビの向こうから聞こえてくるようでした。
ただ、望んだとおりの逃げではなかった分、最後はさすがにお釣りがなくなりバタッと止まってしまいましたが、それでも2周目のキセキを見ていたら、

これはこのまま押し切ってしまうのでは?
と思ってしまうところが武豊騎手の存在感だと思います。事実、僕はレース中盤はキセキが勝つ前提で観ていました。
また、武豊騎手のコメントを読む限りジョッキーとしては満足な競馬ではなかったと思うのですが、エラそうなことを言わせていただきますと、「今のキセキ」としてはベストな騎乗だった――というのが僕の個人的な感想。
2020年の天皇賞・春を語るには欠かせない、ある意味では『主役』としての見せ場は十分演出したと思いますし、馬券を買った人もある程度は納得なのではないでしょうか?

僕は十分に納得していますよ
フィエールマンの最大の長所、それは『闘争心』ではないだろうか
一方、真の主役はもちろん、勝者フィエールマンです。
菊花賞がハナ差、昨年の天皇賞・春がクビ差、そして今年の天皇賞・春もハナ差と、いずれも僅差をモノにしてのGⅠ勝利。これはもちろん、単なる偶然ではないと思います。
並んだら絶対に相手より1cmでも前に出ようとする勝負根性と闘争心。これは競走馬にとって最も重要な“才能”だと思うんです。
これがなければ競走馬としては大成しない。
お祖父さんのサンデーサイレンスはレース中にも隣の馬に噛みつこうとするくらいの馬でしたし、お父さんのディープインパクトにしてもレース中は武豊騎手が上手に折り合いをつけていただけで、実際にはとても気性の強い馬だった。
お祖父さんから続く『闘争心』のDNAが、フィエールマンには最高の形で受け継がれているのではないでしょうか。
スピードとかスタミナとか瞬発力とか、フィエールマンの長所はたくさんあると思いますが、それら以上の彼の最大の長所は『勝負根性』『闘争心』なんだと、今さらながらに分かったような気がします。
愛馬の末脚を100%引き出した、ルメールさすがの手綱
そして、フィエールマンを導いたルメール騎手の手綱もさすがでした。
2周目から武豊騎手とキセキが楽に先行するものだから、後続勢は「これはいけない」と思ったのでしょう。かなり早めの仕掛けでした。
特に、3着ミッキースワロー、5着トーセンカンビーナ、8着メイショウテンゲンら中団よりも後ろの組は2周目の坂を待たずして押し上げていきましたね。
しかし、ルメール騎手は周囲のこの動きにつられず、じっと我慢してフィエールマンのペースを堅持。仕掛けどころもジャストのタイミングで、ただ1頭、上がりタイムが34秒台だったことからも分かる通り、愛馬の自慢の末脚を100%引き出しました。
レース後のインタビューで「楽勝すると思っていた」とルメール騎手が語っていたことから、実は手応えほどの伸び脚ではなかったのかもしれません。これはやっぱり4カ月半ぶりの年明け初戦の影響が多少なりともあったのでしょう。
ルメール騎手も「トップコンディションではなかった」とコメントしています。
また、スティッフェリオが物凄く頑張っていましたね。なぜ勝利寸前まで来られたのかは、僕の競馬力ではよく分からず、好位からスムーズにレースができたことと天皇賞・春に強いステイゴールド産駒ということくらいしか思い当たらないのですが、いずれにせよ、ほぼ勝ちパターンに持ち込んでいました。
そんな中、ゴールの数完歩手前でスティッフェリオをねじ伏せたのですから、より一層の“凄み”をフィエールマンから感じてしまった次第です。
そして、武豊騎手の操縦術に興奮し、ルメール騎手の冷静さに唸る……今年の天皇賞・春も、淀3200mの面白さが3分16秒の間にみっちりと凝縮されたレースだと思いました。
惜しむらくは、馬券が当たらなかったこと、そして、このレースを現地でナマ観戦できなかったことでしょうか。しばらくは京都競馬場で開催される天皇賞・春は見納めだっただけに、なおさらもったいない思いでいっぱいです。
今週のひとり大反省会
1着○フィエールマン
2着 スティッフェリオ
3着 ミッキースワロー
4着△ユーキャンスマイル
5着◎トーセンカンビーナ

1着○オーソリティ
2着△ヴァルコス
3着▲フィリオアレグロ
4着 ブルーミングスカイ
5着△メイショウボサツ
……
8着◎フライライクバード

◎トーセンカンビーナは現状これが精いっぱいか
好配を狙った天皇賞・春は◎トーセンカンビーナが5着。
重賞未勝利の立場でこの結果は健闘と言えば健闘ですが……まあ、4着ユーキャンスマイルとの着差(1馬身3/4)は阪神大賞典とまるっきり同じでしたから、現状の能力を出し切った結果でもあると思います。
3~4コーナーの手応えがフィエールマンとはまるで違っていましたから、もはやこの時点で僕は諦めていました。
ただ、そこから掲示板の5着にまで差して来るあたり、今後さらに成長していけば、長い距離の重賞をにぎわしていく存在になれるのではないかと思います。
来年の天皇賞・春へ向けて、着実にステップアップしていってほしいですね。
オーソリティ好内容もダービーで2強を崩せるかと言うと……
一方、土曜の青葉賞は◎フライライクバードが8着と惨敗……。
馬体重が減り続けていて、今回もマイナス2kg。大きくは減っていませんでしたが、それでもデビュー時から20kg以上も減らしているのでどうなのかなぁと思っていたら、直線はいいところがありませんでしたねぇ。
ダービーには出られず残念でしたが、いい馬には変わりないと思います。なので、秋に向けての仕切り直しと成長に期待したいところです。
勝ったオーソリティは距離延長で良さがさらに出たという印象。府中2400mでこれだけの走りができたのですから、本番でも期待できそうではあります。
ですが、ホープフルS、弥生賞での上位との差を考えると、コントレイル、サリオスの牙城を崩せるかと言うと……?
2着ヴァルコス含めて現実的には複勝圏内(つまり3着争い)があれば、というところかなぁと個人的には思います。
ただ、もし2強が距離に苦戦するようだったら、それらに替わって一気の勝利圏内に浮上する有力候補だとも言えますね。
デゼルの走りに衝撃、オークスの超新星になりそうな予感
あと、当ブログで予想はしませんでしたが、スイートピーステークスを勝ったデゼル。これはインパクトがありました。

ここではちょっとレベルが違う、そんな走りだったと思います。
キャリアわずか2戦で、楽々と差し切った相手もスマートリアン、アカノニジュウイチ、クリスティら重賞でそこそこ上位に来ている面々だったことを考えると、オークスでも一発ありそうに思えてしまいますよね。
何より血統が父ディープインパクト、母はフランス二冠馬アヴニールセルタンという超良血馬。穴人気どころか上位人気の1頭になるのではないでしょうか。
青葉賞は正直、現在のダービー勢力図を塗り替えるほどではなかったと思いますが、オークスはデゼルの登場で大きな波紋が起こった予感。超新星候補の登場で樫の二冠目がますます楽しみになりましたね。
来週は3歳マイル王決定戦・NHKマイルカップです
さて、来週からはそのオークス、ダービーも含めて東京競馬場で5週連続GⅠが開催されます。
春のGⅠシリーズもいよいよクライマックスに突入ですね!
その開幕を飾るのは、3歳マイル王決定戦・NHKマイルカップ。
明日の月曜からNHKマイルCの出走予定馬から有力候補と思われる馬たちをピックアップして解説、分析していきますので、またお時間ありましたら当ブログへ遊びに来てください。
よろしくお願いします!