皐月賞へ向けた最重要トライアルの1つ、弥生賞ディープインパクト記念は横山武史騎手騎乗の4番人気タイトルホルダー(牡3=美浦・栗田厩舎、父ドゥラメンテ)が優勝。先手を取ると、そのままの逃げ切り勝ちでした。
タイトルホルダー号、横山武騎手、栗田調教師はじめ厩舎スタッフ、牧場スタッフ、オーナーほか関係者の皆さま、おめでとうございました。
無敗の2歳王者が敗れる波乱の結末となったこの弥生賞を、本番への展望などもまじえながら振り返ってみたいと思います。
目次
第58回GⅡ弥生賞ディープインパクト記念 回顧・総評
ダノンザキッド3着という結果、何が残ったのか
振り返ってみれば、2歳王者が皐月賞直行ではなく前哨戦を使うのはこれが2年ぶり。最近ではむしろぶっつけ本番が主流になりつつある中での、3歳クラシック戦線本命馬の登場とあって、その走りにはかなり注目が集まりました。
そう、この弥生賞は誰が勝つのか、ではなく、ダノンザキッドがどう勝つのか?
しかし、結果は3着。初めての黒星となってしまいましたね。
もちろん、ここはあくまでステップレース。陣営としてもキリキリに仕上げてはいなかったと思うのですが、それでも「う~ん」と思うような、決して出来のいいレースではなかったように個人的には思ってしまうのです。
道中は頭が高く、川田騎手ともスムーズに折り合っているような感じがしなかったですし、追い出してからの反応も今一歩。いくらスローの行った行った決着ではあったにせよ、無敗の2歳王者としての“凄み”はあまり感じられなかったのではないかなと思うのですよ。
これは安藤勝己さんがツイッターで指摘していたのですが、トライアルだから脚を測った、と。
確かに、これまでの3戦のダノンザキッドと比べると位置取りは後ろだった。何が起きるか分からないトリッキーな中山2000m多頭数のGI。どこからでも競馬ができるという強みを、本番前に手にしたかったのかもしれない。
でも、その青写真は、例え休み明け初戦というハンデがあったにせよ、理想通りには描かなかったということになります。
結果、何が残ったかというと、今年の皐月賞戦線はこれでまったく分からなくなってしまった――ということ。
3歳牡馬は大混戦、皐月賞の中心馬さえも霧の中
ここまで、年明けの3歳重賞ではホープフルS3着のヨーホーレイク、朝日杯FS2着のステラヴェローチェなど、2歳GIの上位組が揃って敗戦。と、そこへ来て頼みの綱だったダノンザキッドまでもが敗れた。
これで突出した本命馬がいなくなってしまい、皐月賞はもう何が勝つのか、いや、その前にどの馬が中心となるのかさえも霧の中、闇の中になってしまった感さえありませんか?
まるで、コントレイル一色だった昨年の反動が来ているかのように……
ただ、一強とはなれなかったダノンザキッドですが、皐月賞でまったく用無しになってしまったわけではない。川田騎手のレース後コメントによると、今回テンションが高かったのは予定通りで、この1走を使ったことでガスが抜けるのはないか、と。
だとしたら、定石通りならば、次はもっとパフォーマンスを上げてくるはずだし、また、中団で脚をタメたところでそんなに切れないのが今回で分かったのだとしたら、戦法に迷いが出ることもない。決め打ちで勝負ができる、ということだ。
こうなったら、勝負師・川田騎手は相当いい騎乗を見せてくれるのではないでしょうか。
これまで川田騎手とダノン軍団というと、前哨戦で強い競馬を見せながらも本番ではイマイチというパターンが多かった。それに比べてダノンザキッドは逆パターン、つまり前哨戦イマイチで本番強いというタイプなのかもしれないですよね。
さらに、この一戦でダノンザキッドの人気が不当に落ちるようなら、これは思わぬ好配・高配のチャンスが皐月賞でやってきた、と考えるべきなのかもしれない。もし弥生賞を順当に勝っていたら、皐月賞でも断然人気していたことでしょうから。
タイトルホルダーは皐月賞本番でも他馬を幻惑するか
一方、勝ったタイトルホルダー。
これは作戦勝ちというか、横山武騎手が上手く乗ったと思います。
内めの4枠から果敢にハナを主張し、先頭に出切った後はペースをスローに落とす。もともと東スポ杯2着、ホープフルS4着と能力のある馬ですから、あれだけマイペースでスイスイと行かれては、後続もなす術なしでした。
共同通信杯のエフフォーリアもそうですが、横山武騎手の手綱が光る3歳春の重賞戦線です。こうして若馬とともに若手騎手が活躍すると盛り上がりますよね。
また、タイトルホルダーは番手からの競馬もしているので皐月賞でも逃げの戦法を打つかどうかは分かりませんが、ハナに立つと強力な馬がいるのはレースとしても締まる。なので、この馬の存在が本番も面白くしてくれそうです。
ただ、今回は少頭数のあくまでトライアルだったからスロー単騎で行くことができたという、恵まれた部分もある。また、2歳時の実績で言えば、重賞2戦でいずれもダノンザキッドに完敗しているだけあって、地力勝負になれば分が悪そう……
……なのだけど、ジョッキーたちもそう思って本番でも楽に逃がしてもらえたら、弥生賞の再現があるかもしれない。
こんなことを考え始めたら、やっぱり今年の皐月賞はホント、わけが分からんですよ。
皐月賞トライアルはまだスプリングステークス、若葉ステークスがあるし、ステップなら毎日杯もある。ひとまず、2021年皐月賞の行方を結論づけるのはまだまだ早い!ということで、例年以上に残りのトライアル、ステップレースを注視する必要がありそうです。
今週のひとり大反省会
1着 タイトルホルダー
2着◎シュネルマイスター
3着○ダノンザキッド
4着 ソーヴァリアント
5着△テンバガー

我が◎シュネルマイスターは絶好2番手のから折り合い良く追走。あとは直線で悠々と差し切るだけだったのだけど、ダノンザキッド同様に肝心の末脚が今一歩。
うーん、2000mでも走れるという一応の格好はつけたと言えるし、ルメール騎手のコメントを読むと、馬場が緩かったことも影響したらしい。また、それだけ勝ったタイトルホルダーが強かったとも言える。とはいえ……ですよね。
ルメール騎手はその一方で距離はギリギリとも言っているようですが、ひいらぎ賞で見せた爆発的な末脚と比べると、相手関係が違うとはいえ、やっぱりベストはマイルなのかなとも思ってしまいますよね。
同じ3歳同士だし、この時期なら2000mの皐月賞でも乗り方ひとつ、展開ひとつで好勝負できる可能性はありそうだけど、どうなんでしょう、GIで勝ち負けを狙うならNHKマイルCの方じゃないかなと思ってしまった弥生賞でした。
もちろん、距離の限界を超えて挑戦する姿勢は競馬をより面白くするし、皐月賞→NHKマイルCというローテは特別にキツイわけでもない。
なんだったら両レースにチャレンジしてほしい。その意味では、シュネルマイスターは今年の3歳戦線をより魅力的にする“主役”の1頭になったとも言えますね。